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2006.03.14

ウォーターマンのエキスパート。

Waterman Expert Waterman Expert
写真の万年筆は、2月の初めごろに購入して以来、ほぼ毎日使い続けているウォーターマンの「エキスパート」です。
近所のLOFTに、通販の写真でチェックして「買うならコレだな」と気になっていた赤軸がFニブで置いてあるのに気づきまして。
(店員さんもなんだか退屈そうだったので..)試し書きだけでもやってみるか..と軽い気持ちで出してもらったのです。

かなりの重量感があり、ひんやりとしたメタル素材...これは私にとっては未体験ゾーンですよ!
(持ってるのは軽めの樹脂軸がほとんど。)
...ということにも驚いたのですが、こんなにずっしりしたペンなのに、スルスル書けることに魅了されました。
まあ東京にまで出て買うまでもあるまい、という説得力ある書き味だったので。
これもご縁ですのでウチのコにおなりなさい...と、その場でお買い上げしてしまいました。
季節柄なのか?合皮製のペンケースがついたギフトボックスでサービスしてくれようとしたけれど、一瞬深く考えてどうせ使わないと判断。
この前プラチナでもおんなじようなのもらったしなあ。
オマケ無し仕様の箱にいれてもらいました。ロイヤルブルー地にWaterman金文字で、この配色はすげぃカッコイイですな。


そもそも、エキスパートが気になるペンである発端は、以前購入した本のなかで良い感じに紹介されていたから。
昨年末はいわゆる「手帳活用本」が少なからず出ましたよね。
その系列として手にとったものなのですが、これはもう少し幅広く、文具やデジタル機器にまで及ぶ範囲で、各界の人が仕事をする上での、頭脳と繋がる愛用ツールとしてのイチオシを語る。というコンセプトのムック本です。
[カラー図解]手帳、ステーショナリー、デジタル機器「超」活用ノート できる人は使っている←目次等の中身が覗けるようです。

精神科医の名越康文氏が、「自分の感覚を同調させるための必需品」として力説する、2本(赤と緑)の万年筆がアップになった大きな写真がすごくカッコイイのです。
使い込まれたせいで、キャップのめっきがちょっとくたびれかけていて、そこから「道具」としてのオーラがドーンと!
誌面では終始「ウォーターマンの万年筆」とあるだけで、型名までは出てなかったので。
いいなあ、こういうの。という感じで、(当時の)優先順位は若干低めながら物欲をそそられていたのでした。


しらべたところ正確に言えば、この本に載っているペン達はエキスパートの廃番色の軸ではあるようです。
でもちゃんと現行でも6種類の色で出ていて、けっこう資格試験勉強用などに支持があるみたい。
スチールペン先で16000円超っていうのはかなり冒険であるような気がしたので、これは「贅沢鉄ペン」としてどんな感じか使ってみようかなという好奇心も大きかったです。

大きさ・太さはごく普通に、ぱっと見でペリカンの600程度。
しかし(M600より)10グラムくらいは重いので、コンコルドに慣れている手には思わず「うわー」と言いたくなるほど重力がかかります(笑)。

最初は付属していたウォーターマンのブルーブラックのカートリッジをつけて使いましたが、これはほどよく青みのある藍色でとても良い色ですね。
濃くくっきりと色が出るうえに、フローも豊潤。
Fニブでも気持ちよい滑らかさです。
ペンポイントも大きめで、わりと捻って持ってしまっても、ちゃんと書き出せます。

しかし、ペン先は硬め。
ウォーターマン全般に言えることだそうですが。
でも、鉄ペンだからこそなのか、このペン先デザイン特有のことなのかわかりませんが、書き続ける中で、ごく微妙~なしなりが跳ね返ってくるのが判ってそれが心地いい。
なによりこの重量感のせいで、筆圧をよけいにかけずとも、ほぼ自重だけでペンを走らせることができるのは新発見。
だからかえって疲れないんですよ。
キャップがありでも無しでも安定する重量バランスだと思いますし。
(しっかりと(カチッと音をさせて)うしろにつけられる機構になってますよ。)

その後結局、いつものラミーの青インクを入れてしまったので(コンバーターは最初から同梱してあったよ..)、フローがちょっと絞られた替わりに、線に味のある濃淡が出るようになって、感心してます。
意外に、入れるインクの性質次第で書き味も変えられるペンである予感もします。

早書きするとしょりしょりと(ガリガリゴリゴリの濁点系にあらず!)小声でつぶやきつつ紙の上を滑り、まさにこれは「書きつけてますよ」という感覚。
勉強用に人気があるのは頷けます。
(書いてるのを全く忘れるような、というような浮遊感も万年筆の誉め言葉としてアリかもしれませんが、そういうのはあてはまらないペンです。)
あくまでも、「書き道具」としての実用に拘りたいんです、と言いたげ。
ということで、Expertというのはなかなかよい命名かもしれません。

デザインも、かなり気に入ってます。
あまりモダンに走りすぎていない、万年筆としての堅実なかたちなのですが。
緩やかな流線型がなんとも上品。
安価でカジュアルな雰囲気は全く感じられないので、ちゃんとした場面に持ち込んでもじゅうぶん役立つかと思われます。
おしりがちょっと細いので、ワコムのペンタブのスタンドにスポッとハマるのです。
(とはいえ、完全固定というほどはハマらず、簡易的に立てられる程度だけど。)
デスクペン感覚で机上に置けてカッコイイのだー!

ラッカー塗りの石目の模様が緻密で高級感があります。
私がこだわったのは、このペンならば金トリムだろうな、ということ。
6種類ある中で、赤軸と、黒無地軸の2本だけがそうなのですが、ペン先が金銀のコンビ配色になってまして、華やかなんですわ。
この感じのほうが、上品なペン先の曲線がすごく引き立つと思うんだけど。
(銀色金具バージョンだと、ペン先は銀一色なんだよねー。それがちょっとクールすぎる気が。)


そんなわけで、手帳やメモ書きにも大活躍してくれてます。
インクにもよるかもしれませんが、めりはりつけた線がとても書きやすいので、日本語長文にももちろん向いてますよ。
ウォーターマンというブランドはこれが初めてだったわけだけど、今後の購入路線を見直さねばならんかも..と決心するくらいの勢いです。
これよりさらに重くて硬いらしい「カレン」とか、もじどおり手強そうだけど、ブーメランみたいで格好いいなあ、とか。

エキスパートをある程度使ったあとに、例えばサファリとかアウロラとかでちょっと書いてみたりするとそれらが「何コレ!!」というほど無重力かつ柔らかいペン先に感じます。
相対的なものなんですけれど。
この幸福な錯覚(笑)もまた、毎回面白い。
「こういうのじゃなきゃダメ」的に食わず嫌いでいるよりも、いろんな特色をもつペンを持ちかえていくのも楽しいんだなあと思わせてくれる現象です。

というくらいの特色を持っていますので。
これで樹脂軸とか金ペンがあったら面白いのに..とは思うのですが「手にも紙にもしっかりした書き味の万年筆って興味あるかも」
という動機があるならば、ぜひともおすすめしたいペンです。
おそらく、M以上のほうがより書きやすいと思われるので、ちょっと試してみたいかもと興味津々。Bまであるらしい。
上記の本での紹介文でも、太字(←としか解説されてなかった..)のほうを絶賛してたので...。

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コメント

うお~、なんだか物欲刺激されます~~。

投稿: shibahime | 2006.03.14 11:25

一夜明けて読み返すと、自分のヲタクぶりに呆れてしまったのですが......ナゲーヨ..
それは別として、とても良いペンなのは確かですよ!

投稿: ほしの | 2006.03.14 14:37

物欲反応しますねやはり。良い色なのだー
無印の万年筆を筆圧で壊してしまってから、高価鉄ペンは未だにノータッチです(苦笑)
カレンも良いですよね。赤のが常に誘われます(^^;)

投稿: かものはし | 2006.03.14 15:10

えー!筆圧で(゚Д゚;)...
エキスパートは落下に弱そうです。Gが過剰にかかりそうな予感...(笑)
無印丸軸もなかなかよいペン先なので最近見直してます。
(エキスパートで使いさしだったブルーブラックのカートリッジをむりやりねじこんで使ってるのですがよい感じ...)

投稿: ほしの | 2006.03.14 15:24

え~と、完全に刺激受けまくって自分のブログのネタにしてしまいましたよ(^_^;)
完璧なレポですねぇ。このエキスパートの試し書きしてる時に文具店の店員さんにこんな説明されたら「じゃぁ、買ってきます」としか言えませんよ(笑

某巨大掲示板でもやたら評判がいいので気になっていたのですが、本当らしいですねぇ・・・
しかも、こういうシルエットの万年筆って好きなんですよ。
何か思い切って買っちゃう出来事でもないかなぁ、と探してみます(笑

投稿: せんべえ | 2006.03.14 23:11

エキスパートも良さそうですね。ほしのさんの惚れ込み具合が伝わってきます。
本当は私も欲しいです。だけど、2本とか3本セットにしたくなりそうなので、少し怖いです。とりあえず、他に本命があるので、そちらから順番に手に入れて、それでも欲しかったら買おうと思います。
その頃には、金ペンが追加されていたらなあ、なんて期待しているのですが、逆に廃番になっていたら、どうしよう。

ウォーターマンの重いペンは、無駄に重いのではなく、重さを生かせるペンだと思います。使い慣れれば疲れにくいですよね。
そして、他社の万年筆に持ち替えたときに感じる、良い意味での違和感、これも楽しめます。

次は、重たくて柔らかい万年筆、というのも面白いと思いますけどね。

投稿: royalblau | 2006.03.14 23:29

>せんべえさん
1万円台の万年筆をこんなにだらだらと褒めまくる店員さんはあまりいないと思いますが...(笑
買ったあとに検索していたら、私も某巨大掲示板での評価が意外にもよいことに気づきました。
司法試験などのたいへんな勉強でも愛用している人が結構いるとのことで。
確かに、書いてることが手から伝わって記憶に残りそうな、良い意味でそういう手ごたえのある書き味なんですよこのペン。


> royalblau さん
万年筆って、「購入順位」というのはかなり真剣に考えてしまいますよね。
私も、コレの次、をどうするかいろいろと構想しつつ悩んでいます。
ちなみに、このときはモンブランのほうを買う前だったので、(エキスパートの)BPも試してみたのですが、こちらはあまりそそられませんでした。
思ったより重心が後ろだったように感じました。

重くて柔らかいペン、いいですねえ。
モンブランの金属軸のやつとか、ペリカンの800以上とかくらいしか?パっと頭に浮かばないのですけれど..
今日丸善を通りかかって見た感じでは、やっぱり、800もデュオフォールドも「...でかっ。」です。
明日日本橋三越行く予定なので今度こそ手に持ってみますけれど。

投稿: ほしの | 2006.03.15 00:36

へえ、私はこれの古いボールペン愛用しています。赤ボールペンです。ボディが紅いから。黒はカランダッシュです。ワイシャツに常時入れていて、万年筆はペリカンの320です。これも小さいからワイシャツにちょうどいい。

投稿: blue | 2006.03.15 13:45

ペンをポケットにさすということがほとんどない私なので、そういうコーディネイトを考えられるのっていいなあと思います。
320がサッと胸ポケから出てくるような人って素敵ですね~!

投稿: ほしの | 2006.03.15 22:34

私は、重くて柔らかい(それほど硬くない)ペンとして、モンテグラッパのエキストラかファーバーカステルの伯爵スターリングシルバーを挙げたいです。
ただし、伯爵の重量バランスは特殊だし、モンテグラッパの信頼性は疑わしいので、強く勧めることはしません。
それでも、私は大好きです。

投稿: royalblau | 2006.03.15 22:34

きょう「万年筆祭」という催しをのぞいてきたので、いろんなものを試し書きするコーナーにずっと座ってぐりぐり書いてました。
伯爵は(思ったより太いと思ったけれど)おっしゃるとおり特殊すぎてちょっとダメでした...
でも、カッコイイペンですよね~。手にドシっときました。

「柔らかい」と表現できる万年筆が意外に少なくて、これがいまの路線なのかな、という感じです。
私が持っている中で、(これを柔らかいと表現するべきなのかは諸説分かれていますが)LAMY2000がいちばんフワフワです。
あまりにも地味すぎて存在を忘れがちになるのが難点です。
やっぱりイタリアの万年筆がよいですわ~

投稿: ほしの | 2006.03.15 23:09

伯爵は、キャップを後ろに付けなければ、(短いけど)比較的普通の万年筆です。ただし、格好良さも半減ですが・・・。でも、伯爵の書き味は好きです。ペリカンのM800などよりも。
それと、信頼性さえ良ければ、モンテグラッパはお勧めなんですけどね。

投稿: royalblau | 2006.03.16 06:21

完璧なインプレ面白かったです。
エキスパートについてこれだけまとめて語ってるブログは初めてじゃないでしょうか?
これだけわかりやすく語れるのなら、いつか本でも出版できそうな勢いですね。
こういう内容の本を寝る前に読みながら幸せな妄想に浸りたい!!
同じくエキスパート愛用者として共感できることばかりで思わず嬉しくなってしまいました。
途中で紹介されている精神科医の愛用品の
エキスパートの写真を見てみたくなりました。
長く使い込まれた万年筆のオーラって憧れますね。

投稿: rodeot | 2006.04.01 08:17

うわあぁそんなに喜んでくださると非常に嬉しいです。
ブログの原稿はエディタで清書して貼り付けているわけですが、万年筆インプレ系は気合いを入れますので、丹念に何日もかけてちょこちょこと書き続けるので(笑)すごい長さになります。
その、無駄な部分を削ぎ取るのが大変...
この記事も、元ネタはだらだらと倍くらいの量で書いたのですよ。
純粋に、好きなモノを誉めるのはたのしいですね。
皆さんと愉しみを共有できるのが特に!

本に掲載されていたエキスパートは、おそらく、廃番の「オリエンタルレッド」と「プルシアングリーン」の軸です。
使い込むとああなるんだなあ、という良い朽ち具合?で、持ち主のご本人も「次を買うのが怖い」というほどの馴染みようだったのが印象深いです。

投稿: ほしの | 2006.04.01 14:37

こんにちは。
「あちら」でコメント頂いていたので遊びにきました。
それにしても素晴らしいレビュー内容です。
私は万年筆自体初めてで、エキスパートが良い万年筆なのか普通の万年筆なのかさえ知らずに、ただただ自分の書き味の好みで購入したんですが・・・
ほしのさんのレビュを読んで、「いい買い物をしたんだ」という自信が持てました(笑)
これからちょくちょく覗かせてもらいます(^^)

投稿: とるとる | 2006.04.22 01:25

あっ。
あの素敵な写真のとるとるさん。こんばんは。
エキスパートは、それまで自分が苦手だと確信してちょっと避けてきた特徴(←ずっしり重い金属軸) をもつ万年筆だったのです。
コミミにはさんだ好奇心だけで店頭で手にとってみて、アレ?という新鮮なオドロキがあったんですね。

こういう万年筆が一本目だと、いろいろ安いものを「迷い買い」することがなくて後がラク(笑)じゃないでしょうか。ホント良いお買い物ですよ。

投稿: ほしの | 2006.04.22 02:42

こんにちは。
エキスパートをもう一本欲しいなぁ・・・
と思いながら何気なくグーグルで
「ウォーターマン エキスパート 万年筆」
で検索したらこのページがトップに来てましたよ!
今やほしのさんがエキスパートのエキスパートです!

投稿: rodeot | 2006.04.30 18:26

ほ、ほんとだ!(゚Д゚;)
通販ページより上とはプレッシャーですね...
辿り着いてしまった方々のお役に立てればいいなあと思うのですが..。

最近は、エキスパート用にウォーターマン純正のカートリッジインク(青)を買ってきて使ってます。
(やはりカートリッジのほうがラクで...。
フローもよいかんじに増えるし、発色がクッキリと綺麗なので、ウォーターマンのインクは良いですね~。)

投稿: ほしの | 2006.04.30 19:27

突然 過去記事にT.Bさせていただきまして失礼しました。
ずっと気になっていたのですよ エキスパート。
今回 縁あってやっと手にしているのです。
バイカラーのニブも魅力的でしたが、軸の色に負けました。
もしも初めての万年筆としてこの1本に出会っていたなら、さらなる万年筆を求めての彷徨も無かったでしょう。(←本当か?)というくらいのお気に入りぶり。
(しかし実情は 是非に手中に収めたいのが身近に2本。憧れが3本。着地点確定が2本・・・という有様で。)
良いものを紹介していただき、有り難うございました。

投稿: Hagy | 2011.01.04 09:05

こんにちは。本年もよろしくお願いします!
いまだに検索ワードでこの記事を読んでくださる方や購入したと言ってくださる方も多くてとても嬉しいんですよ。
私の場合、これを書いたあとも万年筆買いが全く止まらなかったことはご存じのとおりですが(笑)、とても満足しているペンですし、一度も休眠状態にしないままの、お気に入り殿堂入りとなっております。
かっこよさと書き心地の良さ、両立する万年筆は意外に少なかったりするのですが、エキスパートはほんと、合格ですよね。
お互い、今年も楽しく彷徨いましょうね~

投稿: ほしの | 2011.01.04 16:10

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