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2007.06.26

ペンクリニックに行きました。(カレン復活!)

070624 pen clinic日曜日、近所の文具店にてセーラーのペンクリニックが開催されました。
雨の中、てくてく歩いて行ってきましたよ。

店内では、かれこれ昨年の秋くらいから(嬉しそうに)でっかく掲示されていた、このイベントの告知。
年に一度、今回で2回目なのです。
田舎なのに有り難いなあ。
昨年の様子はこちら

今回も川口さんが担当です。わーい。
絶対みて頂きたかったのは、昨年、ボストンのプルデンシャルセンターのLevengerで購入したウォーターマンのカレン
購入前の試し書き当初から多少の書き難さは感じていましたが。
とにかくこの日本未発売の軸をずっと前から欲しかったというのもあって、どうしても日本に連れて帰りたかったのです。
Mニブでペンポイントが巨大。
このせいで書き出しでつるつる滑るような、インクが出るポイントが私の手には合致しないような、微妙な歯痒さがあって。
書き出しの滑り感は、使い込んでいけば間もなく自力で解消できる(むしろその後しっくり手に馴染む次元がやってくる)場合が多いので楽しみにしていたのですが、このペンの場合はちょっと事情が違ったようで、ほとんど改善しなかったのです。
書いている途中でも筆勢によっては時々掠れたりもしましたし。

ちなみに、levengerはオリジナルインクを出しているので知っている人は知っているかも。
ビンのかたちがフラスコみたいにかわいくて、インクの色も鮮やかです。12色もあるんですね。
店頭では、オレンジっぽい色のを万年筆の試し書き用に使わせてくれた記憶が。

というわけで。
こんなに美しいペンなのに、特に今年に入ってからはほとんど休眠状態になっていたのでした。
もったいない。

最終日の午後3時過ぎでしたが、椅子に座った先客さんが。
私が座るとすぐに次のお客さんも隣の席に。
つまりなんと「満席」。素晴らしいことなんですよこの店のペンクリとしては...。
間もなく、休憩からいそいそと戻られた川口さんの顔が「おっ。(いっぱいキテルー!)」と輝いたのを私は見逃しませんでした(笑)。

で、先客さんは年配の女性でしたが、廃版になった細身のモンブランを持ち込んでいました。
長年使っていて書き味は問題ないけれど、インク漏れがあるみたいでなんとか直したい、と切々と訴えてましたので。
(川口さんが試しに紙に滑らせてみると、傍目で見ていても表情のある線がスルスルと出て来て書きやすそうなペン先です!)
しかし、ルーペで見ると首軸が一部割れちゃっているらしく。
まあこれはモンブランでの修理しかないだろうというわけで(おそらく今回のアシスタント的な役割で一緒に来ている)スタッフさんが替わって、テキパキと修理送りのための伝票書きなどの作業を店員さんに指示したり。

で、私の番。
前述のスタッフさんに、「待ち」の間、あらかじめ症状を告げてありましたので。
川口さん、この件が書いてあるカルテのようなメモをちょっと眺めてからルーペでじーっと観察。
(カートリッジをつけたまま持っていったので)その後ススーと試し書き。

「ほう、こりゃ、最初のインク、出ないでしょ~。」
「は、はいそうなんです。」
(...首振り人形のようにカクカクと頷く私は既にド緊張。)

その後は、目にも留まらぬ速さで!ラッピングペーパー(フィルムやすり)の上でぐりぐりぐり...と擦っていきました。
ルーペでまたちょっと眺めて、さらに違う角度でぐりぐりぐり....
そして、ツツーっと書いてみて、仕上げみたいな感じですりすりすり....とまた違った感じに摩擦。
最後に、手のひらにちょっと乗せた状態にして、紙の上で、(ペンの自重だけで)普通に線が出るのを確かめてから
「ハイ、出来たよ、書いてみて。」
この間、1分かかった?という感じです。

正直、オドロキと緊張で(笑)手がワナワナしちゃって、字なんて書けませんでしたけれど、紙への最初の接地でインクが出る!のはこのペンの歴史上初めてなので、ああ治ったんだなあ~!と。
すごい嬉しかったです。

「これ、旅行先で、軸が気に入って買ったんですヨ」
「ウォーターマンだし日本でもちゃんとケアしてくれるからこれからも大事にしてあげてね~」
「はいっ。」
(またもやカクカク頷いて席を立つ私。)
....
ちなみに、私の次の方は、私の親世代くらいの方。
ご主人の「具合が悪い万年筆」をそのまま持たされてきたそうで
「これ、どこのメーカーかも高いか安いかもわかりませんけどインク出ませんので直してください...」
「はいはい見せて下さいね~」
という会話がきこえました。
ちらりと眺めると、堂々たる太軸の緑縞のペリカンでした...。
なんか、こういうやりとりって地方のペンクリニックって感じでいいなあと思う私。

(あらためて家に帰って書いてみて気付きましたが)描線と同時に、ススーっという僅かなシャリ感的手応えが。
ミクロサイズの凹凸をつけてくれたような?
そう、この、ペン先端に上質の絹布でもついたような超僅かな摩擦感が、川口さんにみていただいたペンに共通する書き心地なんです。
私はこのクリーミーな触感(笑)が大好きで。
とにかくこれで、巨大なペンポイントでも紙の上で滑りすぎることがなくなりました。

この、軸とペン先ががっちりと一体にくっついているカレンほどペン先が硬い万年筆はそうそう無いと思うんですが、それでも信じられないくらい柔らかな紙アタリになったんですよ。
書いていて、この硬さと重さが面白い。
このまま使い続ければ、もっと馴染んでいく筈!

まるで新しい万年筆を入手したかのように私の物欲もスッキリと満たされてしまい、そのまま上機嫌で帰宅。
いろんな人が素晴らしいとレビューしている、オリジナルモデルの「マイカルタ」等触らせていただいたのに、手ぶらで帰ってスイマセン...
でもホント、いいもの手に入っちゃった。という新鮮な嬉しい感覚で使ってます。

ウォーターマンのカレンは、筆圧強くて万年筆は自分に合わない、とか思っているような人にもオススメな、ずっしり頑丈なペンですよ。
流線型でモダンなデザインがとっても綺麗なので見飽きません...。

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コメント

それにしても、綺麗な軸ですね。
やはり、ウォーターマンは独特の雰囲気がありますね。
私も、休ませているリエゾンを復帰させたくなってしまいます。

投稿: royalblau | 2007.06.26 21:27

リエゾンはボストンで初めて実物を手にとって、やはり惚れ惚れしました。
ウォーターマンのデザインは、アールデコな香りがしてすごく良いなあと思います。

投稿: ほしの | 2007.06.26 22:21

へぇ~、すごいですね!!プロのお手入れは
あっという間なのですね。
ペンクリニックって言葉自体、知りませんでした。
万年筆って、一生ものっていうイメージがあります。
大切に使って、調子が悪くなったらこうして
クリニックで治療するのですね。
私は万年筆を使う機会がなくて、まだコレって
品物は持ってないんです。
いつか購入する時は、ほしのさんのブログを
参考にさせていただきます!

投稿: ころーる | 2007.06.27 10:54

はじめまして。カリグラフィをはじめて5年のyuruと申します。
文房具好きなので、いつも楽しく拝見しています。
ただし、万年筆はハマると恐ろしいような気がして(笑)・・・・

さて、実はずっと気になる万年筆があって、
ほしのさんならご存知かもしれないと思いメールしました。
プラチナ万年筆のキンギョに似ているのですが、
セルロイドで3色(キンギョに黒が入っている)のものです。
偶然どこかのサイトで見つけたためメーカーなど全く不明なのですが、
もしご存知なら教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。

投稿: yuru | 2007.06.27 12:00

>ころーるさん
ボールペンなどと違って、購入当初からの個体差みたいなものが結構ある(全然書けないのもあったりする)のが万年筆なんですよね〜。
だから、通販等でなく店頭で試し書きしてから買わないと不安という人もわりといますし、好きが高じて自分でペン先を加工する調整のワザを身に付けてしまう人も...
私の場合は、お蔵入り寸前のペンをいつもペンクリニックに蘇生させてもらっている感じです〜。
ころーるさんもいつか一生ものなペンに出会えると良いですね。
なにかの記念日に買ってみるのもいいかもしれないです。

投稿: ほしの | 2007.06.27 13:29

>yuruさん
こんにちは。
私、セルロイドの万年筆は1本しか持ってなくてこちら方面の知識は全然無いんですスイマセン〜
「セルロイド  万年筆」等でGoogleでイメージ検索すると大量に画像が出てきますので、そのあたりから探せばいいのかもしれませんよ。
万年筆はハマると(私程度ではハマったと言わないらしいらしいですが)恐ろしいですよ。
でも楽しいんですよね〜「一生ものだし」と自分に言い聞かせながら何本買ったことか...

投稿: ほしの | 2007.06.27 13:37

川口さんのペンクリは凄いんですね。
いままでペンクリというものを経験したことがないのですが、これを読んでしまうと気になります。
万年筆はハマりだすと止まらなくなりそうで本当に楽しいやら怖いやら。
今年に入ってから既に2本目の万年筆の購入を計画しているところなので、
いい加減に終わりにしないと、
一生かかっても使い切れなくなってしまいそうです。
本当は愛用の1本というのに憧れていますが、
これだけ魅力的なものが溢れている時代に
そういう立派な人間になるのはとても難しいですね。
万年筆を通して自分の煩悩と戦ってるんですが、
いつも負けています。

投稿: rodeot | 2007.06.27 23:38

こんばんは。
待ちに待った、ペンクリに行ってこられたのですね!!
川口さんは、本当に魔法をかけてくださいますよね!!
ものの数秒で。
ほんと、ミクロという言葉がぴったりなくらい・・・私には、何が変わったのか・・・という感じですが・・・。
書き味が良くなると、出番が増えますね☆
それにしても、カレン・・・美しいペンですね♪

投稿: みらくる | 2007.06.28 00:25

> rodeotさん
私はどちらかというと、購入時から店頭で慎重に選ばせてもらうほうなんですが、どうしても年に1、2本はイマイチに思う状態のものが出て来てしまうんですね。
そういうときに持っていくと、新しいものを入手したのと同じくらいの満足感で再生できますので。
都内のペンクリニックはマニアックな方が多くて混雑しそうなので(笑)来年もまた地元開催まで楽しみにしたいと思います。

私、昨年は月に1本以上は必ず買っていたかもしれません。
ですので全く説得力無いですが、ふと「もうじゅうぶんかな?(=せいぜい年に1,2本増やすくらいでいいかな?)」という次元が到来しています。
そういうときが必ず来ます(.....来ない人もいるらしいですが......まあ、1本の手に1本づつしか使用できないわけですから気持ちの上でも飽和量というのが必ず来ます、「コレクター」でない限り。)ので、それまでは買い続けるしかないです!

投稿: ほしの | 2007.06.28 00:34

>みらくるさん
こんばんは~♪そうなんですよ、ずっと待ってました。
在庫がコレだけで選びようがなかったので、試し書きの時点で「こりゃ川口さんに仕上げて頂こう..」と思っていたので。
このままだとどんどん使わなくなっていったであろう感じでしたので、スルスルインクが出るようになって嬉しい!

カレン、デザインはとっても綺麗ですけど、ペン先はコチコチに硬いし重いしで、なんだか万年筆とは違う、別な筆記具のような感覚もあります。
落としたら床(とか、足の甲)に刺さりそう(笑)

投稿: ほしの | 2007.06.28 00:49

flickr見ました。
スーベレーンを買うならこの色、と思っています。
うっわー週末伊東屋で買ってしまいそう。
(いやまて、世界堂なら20%OFFのはず。伊東屋で買うことに意味がある!?)

投稿: yuru | 2007.06.28 15:12

最近写したやつだと、赤縞の400でしょうか?
青縞銀パーツのやつも持ってます。どっちも甲乙捨てがたく美しいです。
http://hoshino.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/400_afd5.html

試し書きさせてくれるなら、どこで買っても良いと思いますよ。
まずは「気分」から入りたいなら青山の書斎館あたりがオススメです。
ペリカンはいつもここで買ってるかなあ。

投稿: ほしの | 2007.06.28 15:58

いがいと簡単に見つかりました!
パーカーのデュオフォールド、モザイクレッドという万年筆です。
が、限定品だそうで・・・・・ありゃりゃ・・・・・いつか目にできるかしらん・・・・・

http://www.morita.ne.jp/hikkigu/parker/duofold-mosaic.htm

投稿: yuru | 2007.06.28 22:19

ほしのさんこんにちは!

そうか、買い続ければ自然にいっぱいいっぱいになるときが来るんですね。
なにか悟った気分です。
そういう考え方があるのか!
コペルニクス的転換ですね。
自然に身を任せます。
コレクターではなくて使うことが最大の目的なので、
たぶん僕にも「その時」が訪れるものと信じて
しばらくは気持ちのままに万年筆との出会いを楽しむことにします。
ありがとうございました!

投稿: rodeot | 2007.06.28 23:05

>yuruさん
他の色はぼちぼち見かけたこともありますが、赤は全然知りませんでした。
結構以前の人気モデルですね。
私は現行のチェック模様のも、見た感じは好きなので。
パーカーは古いのしか持ってないのでそのうちいつか。って思ってます。

>rodeotさん
「この目的にはこんなペン先があったらいいな」を考えながら慎重に買っていくとけっこう厳選メンバーが集まるかと思いますよ。
「限定品」「廃番品」等々、誘惑は多いかもしれませんが。
常に、全ての在庫が一箇所に見渡せて確認できる場所(平たい箱や机の引き出しなど。)に並べて収納しておくのもコツです。
そうすると、ちょっとだけ惹かれるものに店頭で出会ったときも、家で待ってる似たような用途のペンが脳裏に浮かんでブレーキがきくんですよねえ(笑)

投稿: ほしの | 2007.06.28 23:24

ほしのさん。やられました。400ボルドー欲しいです。見ればみるほど・・・
今日モザイクレッドの存在をおしえてくれた、世界堂新宿西口店のおばさまのもとへいかねば。
あ、でもあるところで早速モザイクレッド見つけてしまったんですよ。
どうしましょう!
あースーベレーンでロールバーンにするする書いてみたい

ちなみに私はブルーブラック好きです。
たまには明るい青もよいかしら

投稿: yuru | 2007.06.28 23:24

いいなあ。買えたら教えてね。

投稿: ほしの | 2007.06.28 23:33

何度読み直しても 万年筆が好きなんだな~
と伝わる文面に 和みます

投稿: みかん | 2007.07.16 08:34

旅先で買った記念のペンなのですが、とても実用にできないほど調子悪かったので。
ここまで治していただけてすごく嬉しかったです。
こういうイベントがウチの近所のような田舎町まできてくれて本当に有り難く思っています。

投稿: ほしの | 2007.07.16 22:22

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