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2009.10.21

伊東屋で中屋万年筆を買ってきました。(後編)

前回は軸の件だけで力尽きて書き終わったので、気を取り直して肝心のペン先方面のレビューをしたいと思います。


私はこれまでにプラチナ♯3776系モデルを2本持っていまして、
(・中字のセルロイド金魚軸と、 ・ミュージックペン先の黒軸。)
かなり愛用しておりますので、1万円モデルのボルドー軸細字をさらに買い足したくなって、ずーっと探していた時期がありました。

昨年だったか、何故かそのときに限ってどこに行ってもたいへんに品薄、通販でも「いつ入荷するかわからない」と言われるような状態。
このペン先でも細字を味わってみたかったので、ガッカリしていたのです。

というわけなので、中屋の万年筆はさいしょから、細字を買う気満々で行きました。

Nakaya FountainPen Nakaya FountainPen

試し書き用のペンがたくさんささっていた9本分のらっぱがついたスタンド、すごい迫力だったなあ~!
試筆用のペン達は、いろんな人の手を渡ってきただけあって、どれもフロー多めで当たりが柔らかく正直どれも欲しくなってしまって迷うところだったんですけれど。

今回選んだ細字ペン先、ビシっとした硬さが気持ちよく、いかにもプラチナっぽい(と言ってしまっていいのか?職人さんいわく「まあ、同じようなものです。」)、輪郭のはっきりした、キリリとした線が出ます。
調整してくれる方の面前で字を書くのはすごく緊張するので苦手なんですけれど、なんだか面白くなって、こりこりと「茨城県」とか「細字」とか意味もなく書き続ける私。

いちおう、たいへん人気であるという「細軟」も試させてもらったのですが、うーん、予感はしていたのですが、このふわりとした弾力感は、私の書き心地傾向には全く合いませんでした。残念。
このタイプでもう少し太い「中軟」ペン先も同様。
筆圧の入り抜きがきちんとわかっていて、いわゆる「大人の字」がさらりと書けるような手には、きっと相性がよいであろうことは理解できました。
・・・でも紙上をさりさりと疾走する硬式ペン先を愛する私には難易度が高すぎたのでした。
悔しいー。

そして予想外に、太字、それ以上にミュージック(MS)が書き心地良くて、一瞬手が止まりました。
♯3776で持ってなかったらどんでん返しでこっちに決めていたかもというくらい、すべすべと幸せな感触!


帰宅してしばらく集中して書き込んでみて、実のところ、もうちょいフロー多ければこの硬さは和らぐのかな(試筆ペンみたいな感じに近づけるのかな)、という感想はあり。
川口さんに"インクなみなみ"で調整していただいて購入した「プロフィット21」のEFのほうがほとんど同じくらいの幅で書けるくらいだったりします。
どうしようかな、1週間後にまた調整の方の常駐日があるからもう一度行って、やってもらおうかな。
と、そのとき思ったのは確かなのです。

しかしいくらでもコマカク字が書けてしまう、コリっとした書き心地が1日で楽しくなってしまい、持っているどれにも似ていない個性として可愛がりたくなってきたのでした。
ああ単純。
しかも、その後たった数日ほどで、どんどん、なんだか脱皮するように書き心地がしっくりしてきて、面白いなあと。
今後も順調に愛用していけば、月単位・年単位であの試筆ペンの触感に近づいていくのではないかな。と期待します。

もちろん、目の前でペン先に調整を施しつつ組み立てて頂いたので、書きだしカスレや途切れといった不具合は皆無。
インク出自体も、多すぎず少なすぎず、としか表現できないような「ぴったりまんなか」の程度なのではないかと。
(通販でも対面でも、書き味に関しては、こまかい好みがある場合は対応して下さるのでリクエストするべきですよ。)


薄くて目が詰まった手帳用紙にこりこり字を埋めていくのも、まさに「細字番長」な会社のペン先らしい醍醐味があるのですが。
クッション性ある厚地で筆記摩擦多め系の紙(ツバメノートとか。MDノートなんかも。マルマンのクロッキー帳もいいぞ。)にシャキシャキと書き進めていくのもなかなか新境地にたのしい。
「万年筆は"ぬらぬら"だけじゃないんだぞ!派」の私にはとても相性がよいです。

極細所有であることも手伝っているのでしょうがプロフィット21は穂先がけっこうしなるペンなんだなーと感じるのですが、そのいっぽうで中屋の細字ペン先は、先までがっちり、の堅牢さが手に伝わってきます。
それどころか、このペン先で長時間字を書いたあとは、ペリカンのM800にフンワリな柔らかさを感じたり、モンブラン146がずいぶんしなやかに思えてしまう(いずれもEFペン先で。)という、相対的効果が大きいことに驚かされます。
こういう新たな発見も面白いですね。

Nakaya FountainPenいまのところインクは、購入時にひとはこ頂いたブルーブラックをそのまま使い続けているのですが、好きな色とはいえちょっと実用的に過ぎる感じもあり。
滲みや裏抜けに悩まされないから素晴らしいインクなのですが。
このままこれで馴らしてしまうか、せっかくの軸なのでフロー良好系でいろいろ遊んでみるか、悩むところです。

その他ちょっと珍しいので、売場にあるときに買っておいてもいいかなと以前から思っていてたのが、写真の、ヨーロッパ規格のカートリッジをさすことが出来るアダプター。100円です。
プラチナのコンバーターは持ってるので、必要になるときがくるかどうかは謎ですけれど。
(ちなみに、このアダプタ+ウォーターマンのロングカートリッジは、あまりに長すぎるのか軸内部でつかえてしまってダメでした..。)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

そうそう、つい2,3日前の出来事なのですが、知っている人にとっては、当たり前じゃんと言いたいであろう話。
なんと、♯3776モデルが首軸ごと中屋の軸にクルクルとそのまま普通に付け替え可能なのでした!!


・と、いうことは、漆軸で手持ちのプラチナミュージックが使えてしまう。
(中屋のほうもその手前のところまで黒いのでほとんど違和感なし...黒い樹脂首軸ですけれど中屋側と目立つ段差もなく、先端にリングがついているのでむしろ豪華にみえたり...)

・そして、漆軸でセルロイドキンギョの中字が使えてしまう。
(これはどう贔屓目にみても見た目にかなりおかしい。
しかしこのキンギョ軸は、キャップ無しだと短くて軽すぎ・キャップは重くてうまく後ろに止まらない、ということに微妙に悩んでいたので、中屋軸にとりつけるとベストバランスになってしまうのが悔しいくらい。)

伊東屋で試筆時のミュージックペン先に後ろ髪引かれていたので、思わず、「ヒャー」と声に出してしまったくらい嬉しかったです。
中字も、首軸だけド派手な見かけはべつとして上記理由で格段に疲れにくくなったし。


セコいこと言ってるなあ..、とお思いでしょうが、あまりに驚いたので世界に自慢したくなるくらいの発見(これはまるで、パリで見かけた「カリグラフィペン先首軸3種 + 胴軸1本」セット商品の合理性を味わった思いだ。)、なのでした。

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コメント

細字!!!

太字だと出番が少なくて、手を出すのに躊躇してましたが、細字という手があったかぁ〜。

ペン先EFで、桔梗に蛙のオブジェつけたポータブルがいいなぁ。

投稿: 尚志 | 2009.10.21 19:08

いや~、プラチナ/中屋ならまずは細字を!!(力説)
カエルのかざりはすごくいいですよね。
次は(!)そういう遊びを取り入れてこりまくってみたい感じです。

投稿: ほしの | 2009.10.21 20:05

はじめましてo(*^▽^*)o~♪

いつも楽しく拝見させていただいています

中屋万年筆は僕もいつかはと思っていますので、とても参考になりました (=^▽^=)

ホームページだけではよくわからないので機会を見つけては、実物を観察しています
先日も神戸に行った時に、ペン・アンド・メッセージやナガサワ文具でチェックして来ました

サイズもポータブルかピッコロかで悩んでいます。
ペン先も極細か細字かで悩んでいます。

パイロットのシルバーンを買ったばかりで先立つものが今はないので、資金を貯めながらゆっくり考えてみます。

来月、東京出張があるので、銀座伊東屋に立ち寄ってみるつもりです

投稿: 慎之介 | 2009.10.22 13:05

はじめまして。いつも有り難うございます。

私も、軸サイズは特にかなり長いこと何年も検討し続けて結局、実物を持って試し書きするまで決められなかったんです......。
お悩みの場合は、とりあえず色違いのものでもいいので、取扱い店頭で見かけたときに気になるサイズのものを手にとらせてもらう機会をおすすめいたします~。
(極細は、スゲーーー細かったです。)

神戸は素敵なお店がたくさんあって羨ましいです!
今後ともどうぞよろしくおねがいいたします。

投稿: ほしの | 2009.10.22 13:28

 あ…。そういえば、#3776は細字をお持ちでなかったんでしたっけ。気づきませんでした(汗)。それなら、まずは細字行っておかないと!ですね。

 細軟はお手に合いませんでしたか。確かに、気をつけないと筆圧でペン先を曲げてしまいそうな儚げな柔らかさは、普段使いにはそぐわない面もあるかもしれませんね。

 とにかく、#3776系の細字デビュー、おめでとうございます。ちなみに私は、ほしのさんのお探しだったボルドーのバランス軸に、アダプターを介してラブレターインクのカートリッジを付けて使っておりまする。

投稿: しまみゅーら | 2009.10.23 01:33

あのタイプの軟ペン系統は憧れるんですが、実際に書いてみると、うぅむという感じです。
ふだんからやっぱり筆圧が高いからかもしれないですね。
今までも、パイロットのフォルカンなども含めて、どうも手に合いませんでした~

プラチナの品切れは、中屋購入のいい機会(言い訳)になったので、これからまたしばらく細字天国で暮らします!

投稿: ほしの | 2009.10.23 01:56

おはようございます。

確かに、せっかくのプラチナ中屋さん血統のペン先で細軟はどうなんだと感じます今の私も。
ちなみに筆圧の強弱というより筆文字の上手な方に国産軟ペン先の達人が多いように感じ入る今日この頃です。
ということは、ペンの『入り抜き』が大切なのでは とこれを書きながら自問しています。


>このままこれで馴らしてしまうか、せっかくの軸なのでフロー良好系でいろいろ遊んでみるか、悩むところです。
うむむ・・・ここは悩み所ですね。勉強になります。今後の展開で私の進路も変わってきますので~。


川口さん調整のマルンプロフィット21EFニブは"インクなみなみ"なのですね。いいなぁ うらやましいです。M字で欲しいです。プラチナ中屋血統のミュージック(MS)ニブにもハゲシく心が傾いています。。。

投稿: Hagy | 2009.10.24 09:06

軟系のペン先は、欲しいと言ってる方が多くて人気なのだそうです。
力の伝わるタイミングが独特なので、確かにこれは毛筆に近い書き方が必要のように思います。

その一方で、"レギュラー細字"の、(ペン先の小さなショートタイプでは感じたことのない)特殊なコリコリ感、私のようなオコサマな手にも、慣れるとすごく書きやすいのです。
(これに柔らかい感触を求めたければ紙を選ぶような気はします。)
もともとプラチナペン先は相性が良いのか、他社製よりこなれが速くて日々どんどん書き心地が進化しているような感じです。

中屋、というか#3776のミュージックペン先はすご~くいいですよ。
使い道を選ぶ特殊ペン先かと思ってましたが、買って時間が経った今も全く飽きない面白さがあるし、太字としてたいへん実用的です。

投稿: ほしの | 2009.10.24 10:38

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