中屋万年筆、2本目のペン先はミュージックにしました。
先月、日本橋三越の万年筆祭りに行ってきた感想を書きましたが 今回は、その場で買ってきたものについてです。
3年ぶり、めでたく中屋万年筆になりました!
ペン先はミュージックです。
ずーっと前から、2本目はこのペン先にしようと決めていたのでとても嬉しいです。
●1本目のレビュー(後編も続けて有り):伊東屋で中屋万年筆を買ってきました。
中屋のHPをみていると、思い切り凝った注文をして個性的なペンに仕立てたいと(予算は別として)さまざまに妄想してしまうのですが、実際のところ、こういうイベントの機会に対面で組み立ててもらうのも結構楽しいのですよ。
あと、ネットで見る画像と、ずらっと並んだ実物って、色味も形状の印象もかなり違うんです。
ネオスタンダード軸の格好良さや、十角軸の縞配色な華やかさがずっと気になっていたにも関わらず、結局今回も基本形といえる"ライター ポータブル"軸を選択したのは、「やっぱりこれが一番、私の持ち方にしっくりハマるわ!」と再確認に至ったから。
(バランスだけでなく、ネジ山の位置、首軸との段差や直径含めて私の好みに丁度良い。
丸軸表面からの漆独特の触感もまた、ほどよく指に密着してあたたかいんですよ。)
そして今回、色味は1本目(赤溜)との組み合わせを考えて最後まで迷いました。
鴇色(ときいろ:薄紅というか赤みが差した肌色というか)や菫色(すみれいろ:阪急での販売用として作ったそうです。淡い紫で可愛い感じ!)などの珍しい軸色も見せてもらったりして。
決めたのは当初の青系希望のとおり菖蒲色にしました。
解説によれば、漆としては難しい色なので少々割高になるのですけれど...。
中屋HP上だと、かなりくっきりした紫色として、あえてそのように画像補正されているのが判るのですが。
○漆の色の解説はこちら:菖蒲
実際のところは、真新しい今の時点では上のリンク先とは全く違う「暗い紺色」と言ってよいです。
同様の濃い色のものと並べて眺めて初めて「ああそういえば赤みが入ってるから、青っていうよりムラサキなのかな?」と気付く程度。
"煮詰まって、かな~り濃くなっているロイヤルブルーインク"といってもよいかも。
きっと、経年変化で鮮やかに明るくなっていくのでしょう。
照明の加減で黒~紫までいろんな色味に錯覚してしまう面白さと、溜め塗りのような目立つ明暗差こそないものの、しっとりした艶のある濃紫がなんとも上品!
標準のクリップ色であるイエローゴールドとの組み合わせも程良い華やかさになって非常に好みです。
ミュージックのペン先、プラチナの#3776で使い慣れています。
●6年前のレビュー:ミュージックな万年筆。
今も、休ませるヒマなく愛用してると言ってよくて。
この、タップリなインクフローで縦太/横細のリボン状の線が書けるペン先だと、混み入った字画の日本語でも視認性よく表現できるし、それなりに味のある見かけの文字にもなって、どんどん楽しく書けてしまうのですね。
太罫のノートや日記に大活躍なんです。
普段づかいの素晴らしさが身に染みてわかっているからこそ「いつか中屋(の軸)でも」と夢見てきた2本目なのです。
地球型の中屋マーク等、こまかい模様などの見た目はプラチナと違うのですが、2本切り割りなこと等、基本的作りは双方同じです。
・・・とはいえ、対面でちいさな調整を何度も加えつつ仕上げて下さったので、おろしたて時点の書き味のマイルドなことと言ったら!
(良品だったながらも、ある意味まっさらに「素」の状態からはじまったと言えるプラチナの方の書き心地がここまで来るのは、ちょっと時間がかかりましたから。)
インクフローもたっぷりと瑞々しく、紙の上をスルスルしながら走っていくやわらかな感触にうっとりしてしまうのでした。
中屋を純正ブルーブラック専用とし(軸色がこれ以上無くぴったり合うからね...)♯3776のほうはペリカンのターコイスをコンバーターで。
こうして大好きな2大インクを最強のミュージックで末永く使い分けるのも、あたためてきた夢だったんですよ(涙)
幸いなことに、現在使用中のクオバディス エグゼクティブ手帳と、マルマンのボストンノート、どちらも頑丈みっしりな紙質なので、これらペン先のたっぷりフローにも十分裏抜けずスベスベと快適に使えています。
たのしいなあ。
大切に使いたいと思います。
(ちなみに、中屋万年筆の場合、ミュージックですと標準のペン先プラス1万円になります。
確かそうでしたよね!とお勘定時にこちらから確かめたところ「わかって下さって有り難いです..」と嬉しそうにポツンと言われたのでした。
予算上、じゅうぶんハードルになり得る件なのでこの件お忘れ無く!)
ミュージック(MS)に興味を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、まずは店頭での試し書きをおすすめしたいです。
ヘラ状に接紙面の多い形状ゆえに、普段の書き癖:立て角度や捻り具合 によってはスムーズに使えない人もいると想像します。
無理するとズレや食い違い等、ペン先の傷みにつながりやすくなりますし。
各メーカーにあるペン先ですが、それぞれ個性が大きいと感じました。
(例えば、ペン先の切り割りが1本だったり2本だったり)
MS以外の中屋のレギュラーなペン先は、国産ブランドの平均的な線幅よりさらに0.5~1段階は細いと考えて選んだ方がいいかもしれません。
私の1本目の赤溜軸は、当初細字で購入しましたがあまりにも細くて用途が限定されすぎるので、昨年太字にペン先交換したという経緯があります。
●過去記事:中屋万年筆、ペン先交換してみました。
他の方のレビューでも読んで覚悟していたのですが、生まれ変わってもやはり「コレのどこが太字!」と笑いたくなるようなスッキリとした線でして、パイロットの中字より細い(ようにも見える)し、そもそも手持ちのプラチナ♯3776(セルロイド金魚)の中字とあまり変わらないくらい。
これはこれで好みに合っていて、むしろ非常に実用的という意味では結果オーライですけれど。
今回のイベントでも微調整して頂きまして、細字時代と較べれば何倍も使い込んでます。
「次」があるとすればまた、今までと同じく3年以上開けてしっかり資金をそだてることにします。
(だって、ここまでくれば「極太」が気になるし。実際、ポッテリしたペンポイントがとても書きやすかった!)
色柄・パーツをオリジナルにしまくった特別注文に後ろ髪引かれつつ、また対面イベントへわくわくと出掛けることになるのでしょう・・・
○公式サイト(通販もここから可):中屋万年筆・手作り万年筆
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※ 掲載画像の、2枚目と3枚目はinstagram等で色味を強めにいじってます。照明によっては、まだまだかなり濃紺というか黒っぽく見える軸なので...
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コメント
初めまして。
一年ほど前、「中屋万年筆」で検索したときにこちらのブログにたどり着き、以降インクや万年筆購入の参考にさせていただいています。
まだ中屋万年筆は購入していないのですが、
次の大物は中屋と決めてサイト眺めつつ悩んでいるところです。
サイズからタイプはピッコロに決めたのですが、
カラーを「桔梗」と「菖蒲」のどちらか…、青みの強い「桔梗」にしようかなあと思っていたところで、「菖蒲」のお写真を見たら予想外に濃紺ぽくて。
好きな感じの色だったので迷っています。
実物を見ての「桔梗」と「菖蒲」の印象の違いを教えていただけると嬉しいです。
投稿: カヤコ | 2012.04.21 16:41
はじめまして。コメント有難うございます。
桔梗と菖蒲の違いについてですが、紺色がお好きなら迷うところですよね!
写真の通り、新品に近いうちはかなり色味が暗いです。
1枚目は、窓からの日光だけの室内での撮影。
黒い表紙の手帳の上などに乗せると紫っぽさがナルホドとわかるんですが、これくらいは濃くみえます。
2枚目は色がわかりやすいように少し補正をかけた写真ですが、三越の売場のスポット光源(黄色〜オレンジ色系統の光)ですと、この画像にかなり近い色味に見えました。
ぽってりとした温かみすら感じられ、非常にノーブルな軸色だなあと店頭で惚れ惚れした次第です。
桔梗は、やっぱり濃いんですが菖蒲から赤みをとったような色味です。
新しいうちから、もうすこしスッキリした「青」とわかる鮮やかさはあったように思います。
クールなので、シルバーのクリップやペン先のほうが似合う(と思う人はきっと多いであろう)第一印象です。
ざっくりいえば両方、同じように「紺」としかいいようがなかったのですが、菖蒲は明らかに「赤」要素が入ってるので、桔梗と2本並べると一目瞭然にわかる差はあります。
直接手に持つ頻度にもよるそうですし、経年次第になりますが、だんだんと上層の透明化がすすんで色味がくっきりと明るくなってくるのが漆軸です。
ゆくゆくはもっと鮮明になるであろう「青」か「紫」か、の好みで買われると良いと思います。
中屋のHPくらい鮮やかな紫になるのはいつなのか謎ですが。
私は、青い軸の万年筆は好きで(キャップレスや、アウロラのオプティマなど)既に何本か持っているので。
漆だったら(こんなに最初は濃いなら、育てる経過観察も楽しそうだし...)ムラサキもいいかなと思ったのが決め手です。
あと、最もわかりやすい違いですが、菖蒲のほうが1万円高いのです。
お勘定の比較的直前に気づいたけど、あとに引けませんでした....
後悔はしてないし!!!
投稿: ほしの | 2012.04.21 17:28
いいなぁ…。ほしのさんのペンのラインナップは私の憧れであることが多く、いつもここで疑似体験させてもらっています。菖蒲、いつかは手に入れてみたい一本ですが、その感じがとてもよく伝わってきました。
去年、M800と146という巨塔を購入してしまったので家計的には今年は大物を買う予定はないのですが(セーラーのレクルくらいかな…)、やはり「いつかは中屋」という気持ちはこれからも持ち続けていこう、と記事を読んで再確認した次第です。(と、言いつつ最近モンブランに若干傾倒しつつありますが 汗)
あ、珍しく間違いと思われる箇所を指摘しておきますが、ライフのノーブルノート、もしくはマルマンのボストンノートじゃないかなぁ、と。
投稿: しまみゅーら | 2012.04.21 18:10
ああああっ。
有難うございます!今使ってる「マルマンのボストンノート」に訂正いたしました!!
(先日のボストンノートの記事で、マルマンの方に感想メール頂いたところだったのに....申し訳ありませんでした。)
やはり、しまみゅーらさんと私は、プラチナをはじめとして好みのペン先傾向が一致するのは間違いありませんね。
それにしても、昨年146とM800ということならば、じゅうぶん2年分の「王道大物枠」を満たしていますね...
私も今年はもう、さすがにいいだろうと考えてはいますが、そんなときに限ってじわじわと魅惑の新製品情報が耳に入りつつあり、非常に怯えています(笑)
中屋万年筆だけは、どれにしようかと悩んでいるだけであっという間に1年や2年経ってしまうんです、私の場合。
次(←やめる気はないらしい..)も時間を掛けて慎重にいかないとー!
投稿: ほしの | 2012.04.21 19:00
質問に答えていただき、ありがとうございます。
私は青い軸の万年筆を持っていなくて
(水色のペリカンコンコルドはあるのですが)、
綺麗な青い軸のが一本欲しいなあと思っていたのです。
お話を聞いて、やはり桔梗かなという感じです。
シルバーのクリップやペン先にするのもいいですね。
試算してみたらそれなりの金額になったので、
その点でも桔梗がいいかなあと(苦笑)。
あとはペンポイントを中にするか中細にするか悩みつつ、今年中には注文したいです。
投稿: カヤコ | 2012.04.21 20:31
そうでしょう...HPで試算していると夢と予算がひろがりまくる(笑)
私も、ペン先をレギュラー(イエロー金)じゃない色にしたいとか、首軸に象嵌を入れたいetc.いろいろと構想はあるんですよ~
じっくり考えてくださいね。
どうぞ、良いお買い物になりますように!
投稿: ほしの | 2012.04.21 21:20
漸く iPhone ではなく、PC 上で見る事ができました。青系統の色は情報を伝えるのが難しいですね。(波長が短いから人間の目で識別しづらい?)自分も、菖蒲色にしてはずいぶんと紺色に近いなと思いました。
菫色は、音楽学校専用でしょうか?
投稿: cretinino | 2012.04.23 18:25
そうなんですよ、昼間の光などは特に濃紺です。(でもよくよく眺めるとまちがいなく紫。)
目で見ても微妙な加減を写真に撮るのは実に難しかったです。
公式説明の鮮やかさに至るには何年かかるのか?
これから、漆の経年変化を楽しみに酷使していくつもりです。
投稿: ほしの | 2012.04.23 22:50
中屋万年筆は自分には分不相応なブランドだと思っていたのですが、一昨日、出張先で偶々『和風総本家』を見て以来、購買欲が少し燻りはじめました。
勘でエボナイトに穿孔して、さらに4条ネジを切る職人さんの技には驚きました。(番組はヒントを出しつつアイテムを当てるという形式でしたが、職人さんがエボナイトの棒を出してきた瞬間、ほぼ万年筆で確定だと思ったので、番号も知らないのに、「ほしのさんに電話しなきゃ!」と iPhone を手に取ってしまいました。(笑))万年筆の機能・本質を考えるとニブの方が中心になるべきなのですが、どうしてもニブの調整よりも目立ちますね。
「世界で見つけたMade in Japan」という括りの一部だったのでサンフランシスコの愛好家が集まるシーンもあったのですが、最多本数のコレクターは、やはり医者でした。(笑)
投稿: cretinino | 2013.03.02 13:50
キャップを廻してしめる時の、徐々に密封されていくようなシュルシュル感、中屋ならではの手応えだと思ってます。
そろそろ日本橋の丸善や三越で万年筆関連の催しの季節ですから、ちらっと中屋のイベントを見学もよろしいかと。
(真剣に眺めると本当に買ってしまう魔力があるのでご注意を〜)
絵柄や塗り方に凝ってしまうといくら予算があっても足りない世界ですが、5,6万円クラスで十分に漆軸の素晴らしさを味わえるので、是非いつか。
何年経っても使うたびに、手触りや書きごこちに感動があるので、実に楽しいですよ。
投稿: ほしの | 2013.03.02 16:24